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【現代語訳】 二条河原落書

趣味でやっている歴史有名文の現代語訳シリーズ、【二条河原落書】です。

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二条河原落書 <原文> (改行は訳者)

此比都ニハヤル物。
夜討強盗謀綸旨。召人早馬虚騒動。生頸還俗自由出家。
俄大名迷者。安堵恩賞虚軍。本領ハナルヽ訴訟人。文書入タル細葛。
追従讒人禅律僧。下克上スル成出者。器用ノ堪否沙汰モナク。 モルヽ人ナキ決断所。キツケヌ冠上ノキヌ。持モナラハヌ笏持テ。内裏マジハリ珍シヤ。
賢者ガホナル伝奏ハ。我モヽヽトミユレドモ。 巧ナリケル詐ハ。ヲロカナルニヤヲトルラン。
為中美物ニアキミチテ。マナ板烏帽子ユガメツヽ。 気色メキタル京侍。タソガレ時ニ成タレバ。ウカレテアリク色好。イクソバクゾヤ数不知。内裏ヲガミト名付タル。人ノ妻鞆ノウカレメハ。ヨソノミルメモ心地アシ。
尾羽ヲレユガムエセ小鷹。手ゴトニ誰モスヱタレド。鳥トル事ハ更ニナシ。
鉛作ノオホ刀。太刀ヨリ大ニコシラヘテ。 前サガリニゾ指ホラス。
バサラ扇ノ五骨。ヒロコシヤセ馬薄小袖。日銭ノ質ノ古具足。関東武士ノカゴ出仕。
下衆上﨟ノキハモナク。大口ニキル美精好。
鎧直垂猶不捨。弓モ引キエズ犬逐物。落馬矢数ニマサリタリ。
誰ヲ師匠トナケレドモ。遍ハヤル小笠懸。
事新シキ風情ナク。京鎌倉ヲコキマゼテ。一座ソロハヌエセ連歌。在々所々ノ歌連歌。点者ニナラヌ人ゾナキ。
譜代非成ノ差別ナク。自由狼藉世界也。
犬田楽ハ関東ノ。ホロブル物ト云ナガラ。田楽ハナホハヤルナリ。茶香十火主ノ寄合モ。鎌倉釣ニ有鹿ト。
都ハイトヾ倍増ス。町ゴトニ立篝屋ハ。荒涼五間板三枚。幕引マハス役所鞆。其数シラズ満ニタリ。
諸人ノ敷地不定。半作ノ家是多シ。去年火災ノ空地共。 クワ福ニコソナリニケレ。適ノコル家々ハ。点定セラレテ置去ヌ。
非職ノ兵仗ハヤリツヽ。路次ノ礼儀辻々ハナシ。
花山桃林サビシクテ。牛馬華洛ニ遍満ス。
四夷ヲシズメシ鎌倉ノ。右大将家ノ掟ヨリ。只品有シ武士モミナ。ナメンダウニゾ今ハナル。
朝ニ牛馬ヲ飼ナガラ。夕ニ変アル功臣ハ。左右ニオヨバヌ事ゾカシ。
サセル忠功ナケレドモ。過分ノ昇進スルモアリ。
定メテ損ゾアルラント。仰デ信ヲトルバカリ。
天下一統メヅラシヤ。
御代ニ生デテサマヾヽノ。事ヲミキクゾ不思義トモ。京童ノ口ズサミ。十分一ヲモラスナリ。

出典:
『群書類従・第二十五輯 雑部』 平成三年 訂正三版七刷
塙保己一 編纂、発行 続群書類従完成会、印刷 平文社




二条河原落書 <現代語訳> 

最近都で見る物を、思いつくままあげてみる。
人の寝込みを襲う者。刃物かざして脅しつけ、有り金身ぐるみ奪う者。帝の偽の命令書。緊急招集よくかかり、使いの馬もバタバタと。しらけた喧嘩はそこここで。生首見慣れたものになり。昨日の僧がもう俗人、今日の俗人明日の僧。出家もヘチマもありゃしない。
急に羽振りがよくなる奴。落ちぶれ路頭に迷う奴。所領の保証やご褒美の、ために戦功でっち上げ。訴訟で所領を取り戻す、そのため出てくる田舎者。小箱に入れた権利証、持っているからすぐわかる。
おべんちゃらやら悪口の、才能だけはある奴や、コネを持ってる禅・律僧、ぽっと出てきた馬の骨。能力なんかは確かめず、こいつらみんなお役人。着たこともない正装で、持ったこともない笏を手に、御所に並んでいるサマは、似合わない上に場違いだ。
皆もっともな顔をして、帝に意見を申すけど、得意で語る嘘八百、その下手なこと下手なこと。
名品珍品取り集め、烏帽子を曲げてかぶってる、今流行のスタイルで、下心なんか見え見えの、お上りさんのお侍。夕暮れどきになったなら、浮かれて歩く狒狒親爺。その数のまあ多いこと。彼らがこんなになれたのも、帝格別のお引き立て。それゆえこれらの伊達者は、「内裏拝み」と呼ばれてる。今をときめく執事殿、人の妻にも懸想して、地に足さえもつかぬよう、傍で見るにも見苦しい。
毛並みの悪い鷹モドキ、誰も彼もが手に入れて、手に止まらせて得意顔。鷹は狩りには使われず、格好だけの役立たず。
格好だけというならば、これも最近目立つもの。鉛作りの大刀。人も切れない代物を、太刀より大きくこしらえて、得意顔してさしてるが、あの釣り合いの悪いこと。
はやりの派手な扇には、今までにない五ツ骨。大きな輿に乗る方も、痩せぎすの駄馬に乗る人も、上着は流行りの薄小袖。日々の食料買うために、古い鎧は質に入れ、武士は馬にも乗らないで、内裏行くのに駕籠で行く。
身分上下の区別なく、大口袴が大流行り、生地は精好の高級品。
鎧兜は捨てないが、弓も引けなくなっていて、犬追物をしてみれば、落馬の回数多すぎて、矢を射る数を超す始末。
誰に師事するわけでなく、笠懸辺りで大流行、皆自己流で形だけ。
誰か新たに一流派、興すわけではないけれど、京・鎌倉のやり方を、あれもこれもと取り合わせ、調和とれないエセ連歌。そこここで開く連歌会、採点基準もあやしくて、誰も彼でも審査員。
旧家新興の区別なく、なんでもありのこの世界。
闘犬とともに田楽は、それに耽った鎌倉の、最後の得宗高時が、身上つぶした元凶と、皆が知ってはいるけれど、田楽は今も大流行り。きき茶・きき香の催しも、鎌倉なみに大流行。
ここしばらくで急激に、都は大きくなってきた。各町ごとに建てられた、武士の詰め所は間にあわせ。五間・三間板ばりで、突貫工事の安普請。急場づくりのお役所は、武士の陣屋のやり方で、幕で囲ってあるばかり。これらの建物次々と、至る所に建てられて、今では数え切れぬほど。その一方で人々は、住むところさえ定まらず。造りかけの家数多い。去年の火災で焼け落ちて、空き地となった土地々々も、禍いこえて復興す。しかし一方偶然に、焼け残ってた家々は、横暴無頼な輩ども、有無をいわさず差し押さえ、そこにそのまま放置され。
兵士であっても職がない、そういう輩が増えている。辻で出会えば挨拶の、かわりに噂をひそひそと。
ちょっと田舎に行ってまで、風雅を愛でる人もなく、公卿も武家も京にいて、保身出世に奔走す。
武威を誇った鎌倉の、頼朝の頃の家柄は、かなり高位であるはずの、武士が今では落ちぶれて、位・家柄意味もなし。
朝からせっせと御主人の、牛馬の世話する一方で、日暮れに事件が起きたなら、いの一番に駆けつける、そんなまじめな男には、出世栄達縁がない。
さして手柄もないけれど、いつの間にやら大出世、そんな男も中にいる。
落ち度があれば必ずや、損してしまうことになる、そう考えてすることは、上司にゴマをするばかり。
天下統一オメデタイ。
建武年間この御代に、生まれて出て来てこその、様々奇妙なことを見て、または聞いては不思議がる。以上落書を長々と、書いて連ねてきたけれど、これでも京の人々が、口ずさんでる噂から、一割程をとりあげて、ここに挙げたに過ぎません。



<解説>
建武新政府の混乱ぶりを伝える文章として、あまりにも有名な「二条河原落書」。
急速な理想主義・復古主義を掲げる独裁政権は社会に混乱をもたらす、というよい事例。
結局、武士には「武士の武士による武士のための政権」である「幕府」が必要だった、ということ。
この時代の下克上の雰囲気=社会の流動性は、近世の初めまで続いていくことになる。

リンクフリーですが、文章自体の転載をご希望される方は、事前にご相談ください。
基本的にはリンクのみ推奨です。

コメント

Re:【現代語訳】 二条河原落書 [町人思案橋クイズ集の管理人]

前略

リンク先変更の要請を戴いた者です。
反応が遅くて申し訳ありません。
なぜか迷惑メールのフォルダに分類されていまして、
気付きませんでした。

リンク先をこちらに変更させていただきました。
ご確認ください。

有用な情報が掲載されているモジカの犬の繁栄を
心より願っています。

草々

Re:【現代語訳】 二条河原落書 [みみげ]

前略

町人思案橋・管理人さま

「モジカの犬」管理人H.N.みみげです。
リンク先の変更につきまして、確認させていただきました。
早速のご対応、ありがとうございました。

貴サイトの発展を心より願っております。

草々
・パスワードを入れておくと後で編集できます。

・非公開設定が可能ですが、投稿者からも読めなくなるので、内容の控えをお取りください。

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